重陽の節句の由来

日本にはさまざまな行事があります。

毎月何かしらの行事があるからこそ

1年間メリハリをつけながら

過ごすことができるのかもしれません。

いろいろな行事がある一方で、昔からあるのに

あまり知られていない行事というのも存在します。

そのひとつが重陽の節句というものです。

 

そもそも読み方からしてわからないという方も

いるかもしれません。

ここでは、そんな重陽の節句について由来も含めて

お話ししていきたいと思います。

重陽の節句とは何なのか?

そもそも重陽の節句とは何なのでしょうか。

先でも少し触れましたが、読み方がわからないという方も

多いようです。

重陽の節句は「ちょうようのせっく」と読みます。

 

重陽の節句は99日なのですが、五節句のひとつと言われています。

簡単に言ってしまえば、菊を使って不老長寿を願う行事です。

命の尊さを改めて実感しながら、自然の美しさを愛でる・・・

という今の日本にこそ必要な行事だといっていいでしょう。

 

菊がメインの行事でもありますので、重陽の節句は

「菊の節句」とも呼ばれています。

重陽の節句に限ったことではなく、行事に関係した植物の名前が

そのまま使われることはよくあります。

 

例えば、33日のひな祭りは「桃の節句」とも呼ばれます。

菊の節句とも呼ばれる重陽の節句では、やはり主役となるのは菊です。

99日に菊と言われても「少し早くない?」と思う方も多いでしょう。

確かに、もっと秋が深まってからのイメージがありますが

旧暦の99日というのは今のちょうど10月中ごろにあたるのです。

つまり、旧暦だとまさに菊のベストシーズンだったのです。

 

ただ、この時期というのは農作物の収穫などで忙しい時期でも

ありましたし、現在の暦では季節感がどうしても合わない部分が

出てきます。

 

そのため、重陽の節句は徐々に廃れていったのですが

それでも命の尊さを伝える行事ということで細々と風習が

受け継がれていったのです。

重陽の節句とはどんな楽しみ方をするのか?

 

菊酒

重陽の節句とは何なのかということがわかったところで

その楽しみ方がわからないのでは意味がありません。

実際に、重陽の節句ではどのような楽しみ方をするのでしょうか。

まず、定番となっているのは菊酒です。

 

本来は菊酒というのはお酒に菊を漬け込んで作っていたのですが

現在ではお酒に菊の花びらを浮かべるのがほとんどです。

お花見のときにお酒に桜の花びらを浮かべますが

桜とは違った雰囲気になってなかなか風流です。

いかにも「日本!」という感じがします。

 

菊酒と同じくらい定番になっているのが被せ綿というものです。

被せ綿と書いて「きせわた」と読みます。

重陽の節句の前日に菊の花に綿をかぶせておくと

翌朝にはかぶせた綿に菊の露や香りがついています。

この菊の露や香りのついた綿で体を清めると長生きできると

言われていました。

 

実際に体を清めるかどうかは別として、綿をかぶせると

まるで菊がベールをかぶっているようでとても幻想的な雰囲気になります。

また、簡単にできるのが菊湯です。

日本の行事ではお風呂に何かを浮かべるというのが多いのですが

重陽の節句では菊を浮かべて入ります。

 

見た目にも綺麗なのですが、天然ハーブの入浴剤といった形でも楽しめます。

菊を浮かべたお風呂に入って「さて、寝るか」というときに

登場するのが菊枕です。名前の通り、菊をつめた枕のことです。

菊の香りに包まれて安眠が期待できるだけではなく

その菊の香りで邪気を祓ってもらえるのです。

もちろん、菊をつめられるような枕がないという方もいるでしょうから

そういう場合には枕元に菊を置いておいてもいいかもしれません。

 

あと、重陽の節句の時期になると菊のコンクールが各地で

開催されるようになります。

こういったものを菊合わせと呼ぶのですが

菊に関するイベントに参加してみるのもなかなか

楽しめるかと思います。

 

日頃からフラワーアレンジメントをしているという方であれば

実際に菊を買ってきて自宅に活けるのもいいでしょう。

純和風の菊もいいですが、花屋さんに行けば西洋菊も多く見られます。

生け花で渋く決めてみたり、シンプルに花瓶に活けてみたり

手軽にフローティングフラワーで楽しんでみたりしてもいいでしょう。

 

そして、極めつけは菊尽くしです。

菊尽くしというのは、菊にまつわるものをとにかくたくさん使うことです。

菊の花を活けるのはもちろん、菊の食べ物や菊柄の器、菊の絵

菊の手拭いなど菊にまつわるものをたくさん使ってみましょう。

 

重陽の節句には、お家を菊まみれにしてみてもいいかもしれません。

重陽の節句の由来は?

重陽の節句の楽しみ方がわかったところで

重陽の節句の由来についてお話していきましょう。

重陽の節句は先でもお話しましたように五節句のひとつとされています。

 

五節句というのは、江戸時代に決められた5つの式日です。

式日というのは今でいうところの祝日です。

七草粥で有名な17日の人日の節句、桃の節句やひな祭りとして知られている

33日の上巳の節句、55日の端午の節句、77日の七夕の節句

そして99日の重陽の節句で五節句になります。

 

もうお気づきの方もいるでしょうが、すべて奇数の月日になっています。

古来より奇数は縁起の良い陽数、偶数は縁起の悪い陰数とされていました。

その奇数が続く日ということでお祝いしたのが五節句の始まりなのです。

 

おめでたい反面、悪いことが起こりやすいとも考えられていたので

お祝いだけではなく厄祓いもしていました。

先では菊の露や香りで身を清める、菊の香りで邪気を祓うといったことが

出てきましたが、こういう部分につながってくるわけです。

 

陽数の中でも一番大きな9のぞろ目となる99日は

陽が重なると書いて「重陽の節句」と名付けられたのです。

 

今では五節句の中でも一番印象の薄い行事なのですが

かつては重陽の節句が一番盛り上がっていたそうです。

重陽の節句で主役となるのが菊だという話はしたのですが

菊というのは古来から薬草として使われていました。

菊のパワーで少年のまま700年も生きたという「菊慈童」伝説と

いうものがあるほどです。

 

また、日本の国花でもあることはご存知かと思います。

もともと重陽の節句というのは、中国由来の行事です。

日本では平安時代あたりに貴族の宮中行事として取り入れられるように

なりました。

今では当たり前の菊なのですが、当時は中国から来たばかりということで

かなり珍しいものでした。

 

その珍しい貴重な菊を眺めながら宴会をし

菊を使って厄祓いや長寿祈願をおこなっていたのです。

これが世間に広まっていって、江戸時代には五節句のひとつとなったと

いうわけです。

ちなみに、重陽の節句というのは庶民の間では「お九日」と呼ばれていました。

お九日と書いて「おくんち」と読みます。

 

有名な長崎くんちなどは、重陽の節句を秋の収穫祭と合わせて

祝うようになった名残りだと言われています。

重陽の節句の由来とあわせて知っておきたい後の雛

後の雛

先では重陽の節句の由来についてお話ししましたが

この重陽の節句の由来とあわせて知っておきたいのが後の雛というものです。

重陽の節句が最近になってじわじわと知られるようになって

後の雛というのも知られるようになりました。

 

後の雛というのは、雛祭りで飾った雛人形をちょうど半年後にあたる

重陽の節句で飾るという風習です。

これは雛人形の虫干しも兼ねているのですが、健康や長寿

厄除けなどを願う風習でもありました。

これも江戸時代に広まったと言われています。

 

実際に、俳諧の世界でも「後の雛」というのは

秋の季語になっているそうです。

虫干しも兼ねているということで昔ながらの知恵袋でもあるのですが

雛人形というのは女性の幸せのシンボルでもあります。

 

実際に、雛人形と女性の結婚にまつわる言い伝えなんかもあります。

人形ということで、雛人形は分身としても考えられていました。

本人の代わりに悪いものを吸い取ってくれるようなイメージです。

だからこそ、その雛人形に感謝や祈りの気持ちを込めて

長持ちさせることが本人の長生きにもつながると考えられていたのです。

 

ちなみに、桃の節句で飾る雛人形には桃の花が添えられますが

重陽の節句での雛人形には重陽の節句の主役である菊の花が添えられます。

実際に飾ってみるとよくおわかりになるかと思うのですが

桃の花の可愛らしさとは違って凛とした雰囲気になります。

風流という言葉がぴったりです。

 

最近では、重陽の節句に向けた雛人形なんかも出ているようですので

重陽の節句とあわせて後の雛の風習を実践してみてはいかがでしょうか。

後の雛は99日でもOKですし、月遅れの109日などでもOKです。

 

桃の節句のときには女の子が主役ですが

後の雛では大人の女性も主役になれます。

こういう行事や風習を実践していくと

改めて「日本人でよかったなぁ」と思えるのではないでしょうか。

まとめ

重陽の節句とは、菊が主役の行事です。

中国の行事に由来する重陽の節句は、命の尊さを改めて知る

行事でもあります。

重陽の節句とあわせて知っておきたい後の雛に関しても

実践していきたいものです。

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