秋の七草というものをご存知でしょうか。
七草というと春の七草のほうが有名なのですが、秋の七草というものもあるのです。
秋の七草と春の七草ではやはりその内容も違ってくるものです。
日本にはせっかくはっきりとした四季があるのですから
季節感を楽しむためにも秋の七草と春の七草についてはしっかりと理解しておきたいところです。
春の七草のほうが馴染みはあるので、何となく覚えているという方も多いかと思います。
実は、秋の七草にも覚え方のコツがありますので、サクサクっと覚えてしまいましょう。
秋の七草とは何なのか?
まずは、秋の七草とは何なのかというところからお話ししていきたいと思います。
秋の七草というのは、萩、桔梗、葛、藤袴、女郎花、尾花、撫子の7種類になります。
萩というのはマメ科の植物で、可愛らしい紫色の花をつけます。
可愛らしい反面、秋の花粉症の原因にもなっている植物です。
桔梗は、青紫色の花が特徴的です。
小さい頃に折り紙で桔梗を作ったことのある方も多いのではないでしょうか。
葛もマメ科の植物です。
紅紫色の花が咲くのですが、日本では葛粉のイメージが強いのではないでしょうか。
かなり生命力の強い植物としても知られています。
藤袴は、キク科の植物です。
野生のものはかなり少なくなっていて、準絶滅危惧種にも指定されています。
名前の通り、藤色の花をつけるのですが、桜餅のような甘ったるい香りが特徴的です。
女郎花は、オミナエシ科の植物です。
黄色の可憐な花を咲かせるのですが、昔は美しい女性をも圧倒させるほどの美しさがあるといわれていました。
尾花といわれてもピンとこない方がほとんどかと思うのですが、これはススキのことです。
イネ科の植物になるのですが、これも秋の花粉症の原因のひとつとなっています。
撫子はナデシコ科の植物です。
濃いピンク色の可愛らしい花が印象的です。
可愛らしい見た目に反して実はかなり強い植物で、いろいろなところに自生しています。
このように基本的に秋の七草というのは、綺麗な花を咲かせるものが多いのです。
秋の七草とは万葉集が由来となっているもの
秋の七草とは、実は万葉集が由来となっているものでもあります。
奈良時代の歌人である山上憶良については、学校で勉強したかと思います。
この山上憶良の詠んだ歌が万葉集にあるのですが、その歌が秋の七草の由来だと言われています。
「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花」
というふたつの歌がきっかけで、秋の七草が誕生したのです。
ちなみに、朝貌の花に「あれ?」と思った方もいるのではないでしょうか。
この朝貌の花が何を指しているのかについては諸説あるのですが
桔梗が一番の有力候補ということで秋の七草には桔梗が入っているのです。
朝顔なのではという説もあるのですが、この当時には意外なことに日本にはまだ朝顔がなかったそうです。
秋の七草と春の七草について
先では秋の七草についてお話ししましたが
秋の七草以上に身近なものが春の七草です。
秋の七草は萩、桔梗、葛、藤袴、女郎花、尾花、撫子の7種類でしたが
春の七草は芹、薺、御形、繁縷、仏の座、菘、蘿蔔の7種類となっています。
漢字で表記するとかなりいかつい感じがするのですが
せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ
と表記すれば、見覚えがあるかと思います。
芹はセリ科の植物で、ご存知の方も多いでしょう。
薺はアブラナ科の植物で、ぺんぺん草といったほうがわかりやすい方も多いかもしれません。
小さい頃にぺんぺん草をとって遊んでいた方も多いのではないでしょうか。
御形はキク科の植物で、現在ではハハコグサと呼ばれています。
ハハコグサを漢字で表記すると、母子草です。
繁縷はナデシコ科の植物で、現在ではコハコベと呼ばれています。
コハコベを漢字で表記すると、小繁縷となります。
仏の座はキク科の植物なのですが、現在ではコオニタビラコと呼ばれています。
コオニタビラコを漢字で表記すると、小鬼田平子となります。
菘はアブラナ科の植物なのですが、現在でいうところのカブです。
蘿蔔も同じくアブラナ科の植物なのですが、現在でいうところの大根になります。
秋の七草の由来は万葉集の山上憶良の歌だったのですが
春の七草の由来は少しだけ複雑です。
もともと日本には、若菜摘みという風習がありました。
これが七草の原点といわれています。
また、中国には旧暦1月7日に、「七種菜羹」という7種類の野菜を入れた
羹と呼ばれるとろみのある汁物を食べて無病を祈るという習慣がありました。
今の日本にある行事というのは中国からの影響を受けているものが多く
春の七草ももともと日本にあった若菜摘みとこの中国の習慣がミックスされたものだと言われています。
現在の春の七草となっている7種類に関しては、1362年頃に書かれた
「河海抄」の「芹、なづな、御行、はくべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種」
が由来になっていると考えられています。
それまでは七草の種類が時代によってコロコロと変わっていたのです。
江戸時代の頃には武家や庶民にもこの七草が定着していて、幕府では公式行事として
将軍以下すべての武士が七種粥を食べる儀礼をおこなっていたそうです。
かなり歴史のある習慣なのです。
現在では春の七草を刻んだものを粥に入れて七草粥をいただいていますが
邪気を払って万病を除くといった意味合いだけではなく、おせち料理で疲れた胃腸を休めつつ
野菜が不足しがちな冬場の栄養素を補うといった意味合いもあります。
秋の七草と春の七草の違い
秋の七草と春の七草の違いについてですが、まずそもそもの七草の種類が違います。
季節が異なりますので当たり前です。
先でもお話ししましたが、秋の七草というのは綺麗な花をつけるものが多い傾向にあります。
一方で、春の七草というのは花が綺麗というよりはどちらかというと
食べる要素のほうが強い傾向にあります。
実際に、春の七草には七草粥が存在しますが、秋の七草には七草粥というものは存在しません。
というよりも、秋の七草には毒性のあるものもありますので、食べてはいけないのです。
秋の七草はあくまでも季節の草花としてその美しさを愛でるだけですが
春の七草は邪気を払って万病を除く、おせち料理で疲れた胃腸を休める
野菜が不足しがちな冬場の栄養素を補うといった意味合いを込めて七草粥としていただくのです。
七草の種類はもちろんですが、見て愛でるか、食べて役立てるかといった部分が
もっとも大きな違いになってくるのかもしれません。
七草というとやはり春の七草のイメージが強いため
秋の七草にも七草粥があるものと勘違いしている方も少なくありません。
秋の七草は食べることを前提に選定されているものではありませんので
間違っても秋の七草で七草粥を作るなんてことはしないようにしましょう。
秋の七草の覚え方!歌編
春の七草のほうは何となく馴染みがあって覚えているという方もいるかもしれませんが
秋の七草を覚えているという方はそう多くないでしょう。
覚えようと思ってもなかなか覚えられないという方もいるかもしれません。
ここでは、秋の七草の覚え方ということで歌で覚える方法をご紹介していきたいと思います。
もっともスタンダードな覚え方としては、短歌のように五・七・五・七・七のリズムで
覚えるというものが挙げられます。
その場合には、「ハギ・キキョウ クズ・フジバカマ オミナエシ オバナ・ナデシコ 秋の七草」
といった感じで覚えることになります。
人によってはハギとクズの場所を入れ替えたほうが覚えやすいということもあるかもしれませんが
これが一番スタンダードなものといえるでしょう。
他にも、動画サイトではクラシックや流行りの邦楽に乗せて
リズミカルに覚えられるような動画が投稿されていることもありますので
そういったものを探してみてもいいかもしれません。
自分の好きな曲に合わせて見てもいいでしょう。
秋の七草の覚え方!語呂合わせ編
先では秋の七草の覚え方ということで歌で覚える方法をご紹介しましたが
今度は語呂合わせでの覚え方をご紹介していきたいと思います。
おみなえしの「お」、すすきの「す」、ききょうの「き」、なでしこの「な」
ふじばかまの「ふ」、くずの「く」、はぎの「は」を使った語呂合わせになります。
これらの言葉を組み合わせて「おすきなふくは」「おきなはすくふ(沖縄救う)」
「ハスキーなクフ王」「ハスキーなおふく(ろ)」「くふはなおすき(食ふはなお好き)」
「おはぎすきなクズとバカ」といった語呂合わせでの覚え方があります。
すすきを尾花で覚える場合には、「おおきなハカマはく」といった語呂合わせも可能になってきます。
あまりお上品ではないものもありますが、こういった語呂合わせを活用して
秋の七草を覚えるのもひとつの方法です。
まとめ
秋の七草と春の七草には違いがありますし、まったくの別物です。
秋の七草とはというところから秋の七草の覚え方までマスターして
日本の古くからの習慣を大切にしていきたいものです。
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